購入制限付きバリュー平均法

制限付きバリュー平均法

急落時に大量購入の可能性があるというのがバリュー平均法の最大の注意点です。これを回避するために、リミット(キャップ)を付ける。言いかえれば購入上限を設けて一定金額以上買わないという方法があります。

では、その購入制限を付けた場合にどんなパフォーマンスになるのか、今回は購入制限付きのバリュー平均法をシミュレーションしてゆきます。

上げ相場やレンジでは大量購入はありませんので、以前ノーセルバリュー平均法の検証のところで使った日経平均のパターンで検証してゆきます。

実際にグラフを見ると制限付きの方が損失が大きい

日経平均月足

この1990年1月から2012年4月までの日経平均に毎月10万円のバリューパスで投資をした場合のシミュレーションをしてみます。ルールは下落時にバリューパスの1.2倍、つまり12万円を超える額は購入しない。最大でも12万円までの購入とします。その結果は次のとおりです。

  • バリュー平均法 収益率−12.8% 投資額 26,675,886円 収益額 −3,421,463円
  • 購入制限付きバリュー平均法 収益率−27.3% 投資額 17,607,020円 収益額 −4,803,252円

たしかに投資金額は抑えられていますが、結果的に損失の率も金額も大きくなっています。この購入制限付きバリュー平均法のパフォーマンスをグラフにすると下の図のようになります。

制限付きバリュー平均法のグラフ

制限(キャップ)を付けただけなのですが、何か変になっていることにお気づきでしょうか。何度もバリュー平均法のパフォーマンスのグラフを見ている方ならおわかりだと思いますが、バリュー平均法なのに投資額と評価額の位置が反対になってしまっています。投資額に制限をかけたために、投資額が固定されてしまい、評価額のほうが変動する形になってしまっています。次の、同じ時期に毎月10万円で投資したドルコスト平均法のグラフとほぼ同じ形になっています。

ドルコスト平均法のグラフ

全体的な投資額こそ抑えぎみになっていますが、評価額の推移は、ドルコスト平均法とほぼ変わりません。つまり制限を付けてバリュー平均法をやった場合、いちいち手動で計算しながら手間をかけて注文しても、結果的にはドルコスト平均法とたいして変わらないことをやっているだけになってしまっています。

ちなみにドルコスト法でやった場合のパフォーマンスは

  • ドルコスト平均法 収益率−26.6% 投資額 24,541,686円 収益額 −6,535,118円

という結果になり、マイナスの額は一番大きいですが、率で見ると制限(キャップ)付きバリュー平均法でやった場合が、なんと一番悪い結果となってしまいます。

バリューパスを表示すると・・・

この制限付きバリュー平均法の結果に、実際のバリューパスを表示すると下の図のようになります。投資額、評価額ともにバリューパスとかけ離れてきています。投資額がバリューパスと離れてゆくことによって、シグナルとしては売却が無くなって購入ばかりになり、その購入にも1.2倍で制限がかかるので結果的にドルコスト平均法のようになってしまいます。

バリューパスの表示

下の図は、バリュー平均法で実際に投資した場合の結果です。制限付きバリュー平均法は、やっていることはバリュー平均法の購入の一部に制限をかけただけですが、結果的にはバリュー平均法とは全く別の投資スタイルになってしまっていることが分かります。

バリュー平均法

バリュー平均法の場合、まっすぐにひかれたバリューパス(≒評価額)があって、その上側がマイナスゾーン、下側がプラスゾーンになります。ドルコスト平均法の場合は、まっすぐ引かれた投資額の下側がマイナスゾーン上側がプラスゾーンになりますが、その根本的なゾーンの位置が反転して、制限付きバリュー平均法では、評価額のほうが大きく変動するので、直線的な投資額の下側に来た場合がマイナスになっています。この時点ですでにバリュー平均法ではなくなっています。

そこから先、値が戻していったらどうなったでしょうか

さて、この日経平均ですが2012年5月以降少し戻してきました。この緑で囲った部分を新たに含めたパフォーマンスはどうなったでしょうか。

日経平均その後

  • バリュー平均法 収益率73.4% 投資額 23,280,910円 収益額 17,079,640円
  • 制限付きバリュー平均法 収益率30.1% 投資額 23,830,181円 収益額 7,177,901円
  • ドルコスト平均法 収益率35.9% 投資額 29,880,491円 収益額 10,717,862円

ということになります。この緑色の部分の反発力だけを抽出してみると次のようになります。

  • バリュー平均法 20,501,103円
  • 制限付きバリュー平均法 11,881,153円
  • ドルコスト平均法 17,252,980円

この価格低迷からの反発力こそがバリュー平均法の「強さ」です。これを見ていただくと、本来のバリュー平均法で下落相場を耐えることがいかに大切かわかります。最終的にはもっとも低い投資額で最も高い収益をあげています。ただ、ポイントでの大量購入も発生していることは事実です。この大量購入が耐えられるならバリュー平均法で投資し、これがむつかしければドルコスト平均法をやった方が、手間的にも精神的にもメリットが大きいということです。

1回の投資額の多い少ないは最初の資金管理、投資プランを決める時にしっかりシミュレーションして検討し、急落時の大量購入を避けたい場合は購入制限(キャップ)付きバリュー平均法をするのではなく、小さめのロットでスタートするのが正解です。あとからずらしてユニットを増やすことはいくらでもできますが、一度走らせたユニットを削るのは難しい場合があるからです。

それぞれの最終パフォーマンスのグラフは下の通りになります。

バリュー平均法
購入制限付きバリュー平均法
ドルコスト平均法
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