ノーセルバリュー平均法はお勧めしません

ノーセルバリュー平均法はお勧めしません

バリュー平均法の特徴に「売却」ということがあります。バリュー平均法は、従来の視点で見るとパフォーマンスが上がっても評価額が増えるのではなく投資額が減る方向に見えるので機会損失しているように見えてしまいます。その結果「売却」の部分を無くしてしまえばパフォーマンスがもっと上がるのではないかと考えられがちです。

これは、たとえて言うならもっと早く走りたいからと、車から「ブレーキ」という機能を外して運転するようなもので、それはもはや安全な車ではなく、危険極まりない暴走マシーンでしかありません。

上げ相場の場合は危険が隠れたまま

下の図はVOOというETFの2012年から2021年までの値動きです。

VOO週足

このVOOに10年間毎週3万円を投資した場合のシミュレーションです。ドルコスト平均法では週3万円の積み立てですが、バリュー平均法では1週間で3万円のバリューパスということになります。ノーセルバリュー平均法でもバリューバスは同じく週3万円でシミュレーションしています。(クリックで拡大できます)

ノーセルバリュー平均法との比較

これはあくまでも上昇パターンでのシミュレーションです。上昇が大きいのでドルコスト平均法の最終部分では価格が3万円以上になり機会損失が生じています。それでも手持ちのポジションの価格上昇のため評価額は上がっています。

  • ドルコスト平均法 収益率132.3% 投資額 9,596,437円 収益額 12,697,116円
  • バリュー平均法 収益率120.4% 投資額 10,089,634円 収益額 12,149,311円
  • ノーセルバリュー平均法 収益率91.1% 投資額 33,467,888円 収益額 30,500,764円

これだけを見るとドルコスト平均法が収益率では一番に見えます。収益額ではノーセルバリュー平均法が圧倒的に高収益を上げているかのように見えます。しかし、この図を拡大してよく見ていただくとわかるのですが、左端のグラフのバリュー平均法の「評価額」と右端のグラフのノーセルバリュー平均法の「バリューパス」は、ほぼ同額です。投資額があまりにも大きくなっているために、ノーセルバリュー平均法のバリューパスの角度がなだらかに見えてしまいます。

確かに上げ相場なので多額の収益は上がっていますが、投資額がバリューパスからかけ離れてしまい、もはや本来のバリューパスの意味がない状態になっています。ノーセルバリュー平均法の収益額は、 30,500,764円 ですが、投資額も、33,467,888円に膨らんでいます。上げ相場だからいいようなものですが、これが下げ相場だったらどうなるのでしょうか。

下げ相場ではリスクが浮き彫りに

下の図は日経平均の1990年1月から2012年4月までの値動きです。

日経平均月足

今度は、この日経平均に毎月10万円投資した場合のシミュレーションです。バリュー平均法では毎月10万円のバリューパスということになります。(クリックで拡大できます)

ノーセルバリュー平均法との比較

いわゆる下げ相場でのパフォーマンスですが、それぞれ次のようになります。

  • ドルコスト平均法 収益率−26.6% 投資額 24,542,686円 収益額 −6,535,118円
  • バリュー平均法 収益率−12.8% 投資額 26,675,886円 収益額 −3,421,463円
  • ノーセルバリュー平均法 収益率−13.6%投資額 102,376,636円 収益額 −13,943,349円

下げ相場でノーセルバリュー平均法の怖ろしさが浮き彫りになっています。収益額が −1,300万円を超えてしまっているだけでなく投資額も一億円を超えてしまっています。あらためて言うまでもありませんが、正規のバリュー平均法とは同じ時期、同じバリューパス、同じ銘柄に投資しています。

バリュー平均法では下げ相場でもバリューパスが機能して投資額がバリューパスに収れんしてゆく形になっています(評価額≒バリューパスです)。バリューパスという支えがあるからこそ、下げ相場でも計画的に落ち着いて投資することができます。

結局ノーセルバリュー平均法というのは下げ相場においては、もはやナンピンと変わりなく、下げ相場を乗り切る前に資金が尽きてしまいます。

投資において最も重要なのは資金管理であり、どんな投資方法においても資金管理なくしては生き残っていけません。ノーセルバリュー平均法は、この投資の大前提である資金管理が破綻しているので絶対にやってはいけません。

トラリピ的感覚の積み立て投資

FXでトラリピやトライオートなどのリピート系の経験があれば、上下動を売買せずにポジションを持ち続けることがいかに機会損失なのかはわかると思います。

そして、この上下動をうまく売買して乗り切ることが、結果的には保有ポジションの平均単価を下げ、下落相場の反転という最も重要な局面まで生き残る必須要素であることがわかります。

バリュー平均法では、レンジや下げ相場の中で売買を繰り返し続けた時に、含み益よりも売却益の方が大きくなって、結果的には売却益によって最終パフォーマンスが上がってゆくケースも多くあります。

売却を機会損失として捉えるのではなくて、売却こそ次の投資に向けての利益の積み重ねと視点を変えていったとき、売却は欠かすことができないバリュー平均法の一部であると確信できます。

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